「狭くて心地よい」
2016年 01月 12日
制約の中で最大限にできることを探っていく作業は、難しくも設計の醍醐味でもあります。
中でもリフォームの設計では、その制約が大事な前提となります。
既にある空間ボリュームの中で、何かを除いたり加えたり変えたりして、機能も心地よさも以前より向上させることが課題です。
これまで狭くて片付かない困った場所だと思っていたスペースを、狭さを感じさせずかつ役に立つ空間に変身させられれば、リフォームの「やってよかった!」につながります。
わが家の子ども部屋のリフォームもそれを目指してのことでした。
リフォーム前、7.5畳の部屋の中央に2段ベッドを置き左右に分割し、姉妹それぞれで使っていました。ベッドと通路部分を除くと一人分のスペースは細長の2畳ほど。
狭い上に子どもの細々とした持ち物を納める棚や机は収納量少なく、片づけにくくで、どちらも足の踏み場もない状態でしたが、、、
デスクと本棚を造り付けることで快適空間に。

壁の高さと長さを最大限利用し立体的な収納を作ったことで、物が片付き、部屋に本人たちの居場所ができました。

以下は、あるお宅のリフォームです。
玄関に続く廊下を取り込み、リビングを広げる間取り変更を行いました。
それにより玄関は小部屋状に独立し、広さは減少することになりました。
以前はホール+廊下で床面積があり、見た目はともかく、物や靴を置いたままにしていても出入りに不自由しませんでしたが…。

狭くはなっても、使い勝手よく、人を迎える場としてふさわしい設えにするためには、、、
やはり、収納が鍵となりました。
靴、スリッパ、傘、コートなどを出しっぱなしにせず済むよう、敢えて収納に面積を割くよう計画しました。
一方の壁には天井までの物入れを設け、玄関に置いておきたい大抵のものは扉内に収まるように。

もう一方は腰高の靴入れとし、飾り棚も兼ねます。

2畳に満たない狭いスペースですが、いつもすっきり感じのよい玄関のできあがりです。
「7.5畳を二つに分割」では、使い勝手と心地よさを目指し、もっと積極的に造り込んだ例があります。
天井高さの手持ち洋服入れを、互い違いに置いて二部屋に区切り、それぞれに出入り口を設けました。
収納を含め3畳強の東の部屋。

既存のベッドを置いたら残りの床はわずかです。
その分コーナーを利用した二つのデスクと本棚を造り付け。

少しの隙間を利用して、天井までのCD棚。

物を厳選して少ししか持たないようにしている住み手の暮らしぶりもさすがですが。
西の部屋は少し大きく、それでも4畳強。

押入だった部分をオープンにし、ロフトベッドを造り付けています。
その下はコの字型に配した本棚。

デスク廻りにも無駄なく棚を仕込んで、空間を余すところなく利用。

どちらも、狭いけれど住み手の身体感覚にフィットする、心地よい空間になっています!
これらの改修と建て主さんの暮らしぶりを通して見えてくるのは、狭くても工夫次第で十分に快適な暮らしができるということです。
住む人が、そこでの生活を具体的に思い描き、物の取捨選択に取り組み、快適な暮らしのイメージを持つことが、大切なようです。
ため込んだ物を収納する場所を作ることができたから快適になったのではなく、限られたスペースに、必要なもの置いておきたいものは何かを考え、その収納場所と人の居場所それぞれが、過不足なく在ることが心地よさにつながったのです。
スペースは、広ければいいというものではありません。
今の世の中、何がどこにあるかわからないほど物に埋もれた広い家が少なくないのは、自分が把握できる以上の物々を持ってしまい、快適な暮らしに関するイメージを見失ってしまっているからではないでしょうか。
小さな空間だからこそ可能な、自分の目の届く範囲の、こざっぱりした気持ちのよい暮らしに目を向けていただきたいものです!
(勝見紀子)
by jogikai | 2016-01-12 23:19 | Trackback | Comments(0)