築 46 年の木造 2 階建ての我が家は、父が設計した住まい。
建築学科を卒業し、ゼネコンで現場監督をしていた父の夢は「愛する妻と可愛い子供達と幸せに楽しく暮らせる家をつくること。」その言葉通り、父が亡くなった後も、どこの家にお邪魔してもやはり、母にとっては、この家が一番居心地が良いと言います。
私が住宅の設計にたずさわるようになってから、20 年になります。
「家というのは暮らしの器であり、住み始めてからが本当の住まいづくり。家族の歴史を積み重ねていく中で、住まいは暮らす人の心を癒し、生きる喜びを見出すもの」だと思えるようになりました。
子育てなどで忙しい時期を母は、独立型のキッチンで家事をこなしてきました。
当時は、そのスタイルが料理に集中できて、使い勝手が良かったと言っています。新築当初は独立型で L 字型のキッチン、築 15 年で 3 人娘の成長で、食器も増えて、収納スペースを確保するために I 型のキッチンにリフォーム。
築 35 年で、子供達も独立して夫婦で楽しむ時間を持つことができました。
暮らしにゆとりができた母は、家族との会話を楽しみながら家事をしたいということから独立型キッチンを対面型のキッチンにしたいという希望を持っていましたが、老後に備えて断熱工事などのリフォームを先にしなければならず、なかなか希望が叶いませんでした。
そして、築 42 年目で私が母の希望を聞きながら、キッチンリフォームの設計を行いました。
現 在 、 キ ッ チ ン に 立 ち な が ら ダイニングや隣接するリ ビ ン グ の 様 子 が わ か る 母 。
庭で茶花や山野草を育てているのを、ダイニングに生けることも、母の楽しみになりました。後期高齢者である母にとっては、ここが終の棲家となりますように。アトリエきらら一級建築士事務所 小林 輝子