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『大平生活塾』の新しい動き

コロナ禍で行けなかった信州の大平にこの夏、3年ぶりに行ってきました。


「大平宿」とは?
数年前の「大平生活塾」開催パンフレットの地図を転載します。

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大平集落は信州伊那谷と木曽谷の間の峠の村。高度成長期の真っ只中の1970年に集団離村して無住の村になり、奇跡的に当時のままの集落の建物と街道が保存されて現在に至っています。
1991年から3カ年かけて保存修復工事が行われました。修復工事に参加した設計者グループの「生活文化同人」が、大平のその後を見続けようと、毎年夏に2泊3日の合宿を続けてきました。同人メンバーも若い人の参加が増え、頼もしい限りです。今夏は3年ぶりの開催で女技会メンバーから私を含め2名が参加しました。

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3年ぶりの大平は、地元の方々の手入れのおかげで、
いつもと変わらぬ姿で迎えてくれました。 


「大平生活塾」は大平の古民家に泊まり、囲炉裏とカマドでご飯を作ります・・古民家キャンプと呼ぶ方がイメージしやすいかもしれません。
今年は面白くなりました。生活文化同人の若いメンバーが数年前、東京から大平集落のある飯田市に移住。設計の仕事のかたわら大平に通い、地元の方々と一緒に保存活用の道を探る決心をしてくれました。彼の尽力で、解体予定だった小さな家を同人で借り受け、今夏より調査や修繕を自分たちでできることになりました。

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  築70年の比較的新しい民家。修繕前の街道面外観。
敷地左が一段高くなって
いるため、左側の接地部分の傷みが進んでいた。
(撮影 梅田太一)


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建物南側で作業中。長年の雑草や土砂が降り積もり、
建物の土台周りの風通しが悪くなっている。
(撮影 宮内智也)


建物周りの雑草を抜き、室内外の床下に堆積した土を運び出しました。
風通しが改善しました。

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敷き土台下の石が見えてきました。石場建てです。


皆で床下の土を運び出しているところです。山の上で涼しいはずなのに汗だくです。
布基礎普及の前の石場建の床下にとって、通風と乾燥がいかに大事かを、痛感しました。

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石場建ての建物の床下をじっくり見られる、愉悦の時間でした。

宿泊は集落の中にある、整備された大きな古民家。
カマドで炊いたご飯と囲炉裏の鍋と炉端の焼き物の夕食が美味しかったです。

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あっという間の3日間が終了。1泊で帰った人もいますが、最後まで残ったメンバーで閉塾式のご挨拶。小さい建物ですが街道に面した、なくてはならない存在感のある家です。修繕したいところはたくさんあります。
この家とどう向き合って行くか、それぞれが考えながら帰途につきました。

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手前は集落の中を流れる井戸っ川。
生活用水であり、子どもの安全な遊び場にもなる。清流には小さな魚も棲む。

文:西岡麻里子(アトリエ楽一級建築士事務所)
写真:梅田太一(もば建築文化研究所)、宮内智也(生活文化同人)、西岡麻里子
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※『女性建築技術者の会(通称:女技会)』とは、
建築に関連する様々な仕事を持つ女性が主体的に運営する任意団体です。
 女技会のホームページは→コチラ

by jogikai | 2022-10-15 08:00 | 歴史的建築物 | Trackback | Comments(0)  

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