コンクリートブロック造の建物
2022年 11月 01日
会社勤めのかたわらに個人的な活動として、国土交通省補助により日本の補強コンクリートブロック造技術をフィリピンに紹介、普及するプロジェクト「フィリピンにおける安全なブロック造技術の普及」事業の専門委員を務めています。
沖縄県内では現在でも年間数十棟のコンクリートブロック造住宅が新築されていますが、首都圏をはじめ本州内ではコンクリートブロックというと塀に使用されることがほとんど。工事のできる施工会社や職人さんも地域が限られるのが現状です。本州にはコンクリートブロック造の住宅が「ほぼない」というより、「無くなってしまった」です。
1950年代から60年代半ばまで、安価な耐火構造としてCB住宅は多く建設されました。とくに北海道は住宅金融公庫の寒地住宅融資の関係で非常に多く、現在もストック数としては全国一。しかしブロック積みの人件費や材料輸送等のコスト問題などで減少してゆき、設計・施工の実務に即した経験、知見が失われていきました。
沖縄では木造住宅の価格が高いことと台風の影響により、RCやCBは本州よりも一般的であり、残ったと考えられます。しかし最近では木造の住宅メーカー・工務店が参入してきたようです。安価な耐火構造ということで、戦後の一時期に日本全国に普及した時期もありました。実は、壁式構造なので地震・津波にも強いのです。コンクリートブロック壁を仕上げ材で覆わず、躯体をそのまま見せるのも新鮮だと思います。
写真1 沖縄建築会館(沖縄県浦添市) 内部
吹抜け部分の壁面を装飾しているのは彫刻されたコンクリートブロック(CB)です。壁画でなく壁彫刻ですね。沖縄の彫刻家、能勢孝二郎さんの作品です。沖縄のガウディって感じです。モルタル目地も見えます。
写真2 沖縄県中頭郡中城村(ナカガミグン ナカグスクソン)の工事現場
2021年11月、プロジェクトの沖縄視察調査(現地設計者やブロックメーカー、研究者らへのヒアリング等)の際に、一般住宅の躯体工事を見学させていただきました。CB壁は構造体、法令用語で言うところの「耐力壁」です。
松崎志津子 構造設計一級建築士、博士(工学) / ㈱東日本住宅評価センター勤務
建築に関連する様々な仕事を持つ女性が主体的に運営する任意団体です。
by jogikai | 2022-11-01 08:51 | 住宅設計 | Trackback | Comments(0)