オンライン or 対面
2023年 04月 15日
私が大学の非常勤講師を務めるなかで、一校は2020~2022年度の3年間をずっとオンライン授業を行ない、この春から漸く対面授業に戻ったところです。
オンラインとなり教師としてよかったことは、出席とともに全ての出席者から質問、意見、感想などのコメントが提出されることでした。対面授業では質問や興味のある学生が私のところにきますが、リモートでは出席者全員の声を聴くことができました。ですが学生にとっては学生同士のコミュニケーションもなく、コメントの提出は負担となっていたかもしれません。

写真2 学生の実習風景(コロナ禍前)
一方で対面授業との相違点を一番感じたことは、実習授業についてでした。3年前までは授業中に実習を2回行なってきましたが、これを中止するかオンラインで実行する必要が生じたことです。ひとつの実習はタイル貼りの施工で、湿式工法と乾式工法の相違点を学ぶ授業です。はじめに実験講師が湿式工法のタイル貼りを実演し、のちに学生が乾式工法のタイル貼りに取り組みました(写真1)。30㎝のベニヤ板に9枚のタイルを接着剤で貼り、隙間に目地を埋める実習を行ないます(写真2)。

図1 配布用のマニュアル(抜粋)
毎年学生が楽しみにしているこの実習を、オンライン授業でも実現させたいと考えました。そこで事前に実験講師の実習風景を動画で撮影、持ち帰り用の実習キットとマニュアルを準備し、動画を見て自宅で一人で実習を行なうことにしました(図1)。また一人でも取り組みやすいようにと規模を縮小しました。課題を提出した学生の感想は、実習自体は楽しかったけれども、講師が簡単に行なっていた作業を実際に行なうと難しかったということ、特に目地を埋めることが大変だったというものでした(写真3)。やはり実習を一人で行なうことは困難だと実感しました。

写真3 オンライン授業での提出作品(2021年度)
昨年の授業では、幸いにして対面での実習を行なうことが実現しました。学生同士会話をしつつ実習に取り組み、教師は周りを見回し進行状況を確認するという授業風景が戻ってきました。提出された多くの作品は、これまでで一番精度が高いものでした(写真4)。

写真4 対面授業での提出作品(2022年度)
コロナ禍によって導入されたオンラインシステムは、私たちの生活への利便性をもたらせました。一方で対面だからこそのよさを見直されることにもなりました。最近はオンラインと対面とのハイブリッド型システムも導入されており、今後も進化は続いていくことでしょう。5年後10年後の日常はどのようになっているのか、少しの不安とともに楽しみでもあります。
文・写真 杉山経子 博士(工学)建築歴史・意匠 杉山経子建築+デザイン研究室
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by jogikai | 2023-04-15 00:15 | 学ぶ・遊ぶ | Trackback | Comments(0)