エコプリント
2023年 11月 01日
草木染めの一種、「エコプリント」をご存じでしょうか?
植物の茎や花などを煮出して作った染液で布を染めるのが一般的な草木染めですが、エコプリントの場合は染液を作らず、葉っぱや花そのものの姿かたちを、布に写し取る染め物です。
くっきりと染まった葉。カエデ類は濃く染まる傾向。
布に配置したイタヤカエデの葉。
数年前にこの染め物に出会ったとき、自然を一枚の布に移し替えるようなダイレクト感と、選んで配置した植物がどんなふうに仕上がるかのわくわく感で、すっかり虜になりました。
プリントというけれど、描き写したり再現されるのではなく、葉や花の輪郭や葉脈や色素といった植物の要素ごと、そのまま布に乗り移る現象に、いたく感動したのを憶えています。私の中では、子どもの頃崖土の中から見つけた貝の化石や、ど根性ガエルのぴょん吉(だいぶ古くてすみません)に匹敵する、腑に落ちる感覚でした。
やり方をざっくり言うと、
布に葉っぱなどを敷きならべ → くるくると棒に巻き付けて密封 → 蒸す という工程です。
葉っぱが、蒸されることでその色素が染み出て、形状ごと布に染み込む現象が起こっています。別名の「バンドルダイ」は、束ねて染めるこの手法から来た呼び名だそうです。
緑の葉っぱがそのままの色で出るわけではなく、概ね茶や灰色をベースとした色味になります。
野菜を長時間蒸すと色の鮮やかさはなくなるけれど、それぞれの微妙な色味の違いは残る、その感覚です。渋めの色のバリエーションだけれども、それぞれの形と相まって、とても味わいと存在感のある造形が現れます。
あらかじめ布に染み込ませておく媒染液の種類によっても、色の出方は変わるそうです。
蒸し終えたものを開いているところ。葉の裏表でも現れ方が異なる。
やり始めると、どんな植物がどんな色に出るのか、季節の違いはどうなのか、いろいろと試してみたくなります。葉で絵を描くようにつくるとか、同じ地域の植物だけで作ってみるなど、コンセプトを決めてやってみるのも楽しいものです。
いつかこの染め物を、建具や壁面に貼ったり窓のシェードにするなど、インテリアに取り入れること企みつつ、エコプリントに勤しんでいます。
Before、afterを対比した写真。知人が作ってくれました。
文・写真 勝見紀子/株式会社アトリエ・ヌック建築事務所
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by jogikai | 2023-11-01 08:00 | 素材・仕上材 | Trackback | Comments(0)