組子細工を建具に
2024年 07月 15日
木工の伝統技術である組子細工。
細かなパーツを組み合わせて多彩な文様を作り出します。

高度な技とセンスが求められる組子細工は、建具職人さんにとって一度は取り組んでみたい、究極の建具仕事のひとつです。
住まいに座敷がなくなった現代では用いられることは稀ですが、まだまだ各地でその技術が受け継がれているようです。
店舗や宿泊施設、公共の建物などで見かけるようになってきました。
設計した住まいで、二本の建具に取り入れる機会を得ました。
この住まいでは若い建て主さん夫婦が組子細工に興味を持ち、職人さんの指導の下、建具に嵌める組子パネルを自分たちで組み上げました。
それができたのは、組子を構成する一つ一つの部材の精度が高いゆえ。
職人さん曰く組子細工で重要なのは、素性の良い特別な木材を使って、バラツキの無い完璧な形のパーツに加工することなのだそうです。そのパーツを膨大な量使って組み上げるのが組子です。

組子の部材 専用の刃物を使い加工する
文様は、「桜」と「麻の葉」を市松に配置することに。
スタンダードな「麻の葉」の中心に部材を追加して花に見立てたのが「桜」です。

建主さん夫妻が組み上げた組子パネル
居間から洗面所に入る引戸が、建て主夫妻作の組子パネルを配したデザイン。
杉の柾目板の鏡板上に組子納めた框戸です。
60cm×30cmほどの大きさのパネルですが、組み上げるのに数日を要したとのこと。
上品な戸に仕上がり、愛着はひとしおだと思います。

一部使いでも存在感を放つ組子
玄関から居間に入る引戸は完全に職人さんの手によるもの。
全体が千本格子で、その一部が組子になっているデザインです。
組子の縦材がそのまま延長され縦格子になっているつくりで、高い技術が発揮されています。
組子・格子部分は桧材、框は杉の赤味柾目材です。

逆光で見ると、レース織物にも見える透け感が美しい。
2本の美しい建具が空間の質を上げて、住み手の好みも表す存在になりました。
文・写真 勝見紀子/株式会社アトリエ・ヌック建築事務所
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by jogikai | 2024-07-15 08:00 | 住宅設計 | Trackback | Comments(0)