愛着のある家に住みつなぐ
2025年 03月 15日

既存増築部分を解体して造り直した寝室
同世代の友人知人から、ご実家について相談を受けることがあります。築50年近くなると改修を諦め、建て替えたり売却したりという選択もある中、家に愛着を持ち、古い家を活かしたいという方もいらっしゃいます。今回ご紹介する案件も、そんな家のひとつです。
昭和47年に新築されて以降、外壁塗装などのメンテナンスを怠らず、家族のライフステージに合わせて増改築されてきましたが、この先さらに快適に住み繋ぐために、改修したいというご相談でした。
まず住宅の現状を知るために、住宅医による建物調査を行いました。結果、洋室増築部分に上部バルコニーからの漏水による腐食とシロアリ被害がみつかり、キッチン増築部分は、上階外壁下の壁が撤去されて構造的に望ましくない状態だった上に壁内結露と漏水のせいか壁内木部が完全に腐食していることが判明しました。
当初は暗いキッチンを明るくし、みんなが集まるリビングと食堂を快適にしたいというご要望でしたが、住宅調査直後に能登地震があったこともあり、耐震補強を第一優先として特に1階はほぼ全面的にスケルトンリフォームすることになりました。
まず蟻害が深刻で構造的・防水的にも問題があった増築洋室は思い切って解体し、コンパクトな洋室として再建築。

2階外壁下には壁を設けて直下率を上げ、その壁を間仕切りとしてパントリーを新たに設けました。北側で暗くなりそうなので、思い切って明るいピンクの壁紙にしたのは、施主様のセンスです。

キッチン背面収納は市販品を利用
キッチンの背面収納は、施主様自ら選定された通販家具をうまくレイアウトし、それらを固定するカウンターは大工さんに造作してもらいました。

床の間は半分を仏壇置場に
仏壇を直置きしていた床の間は半分を仏壇置場とし、もう半分は掛軸等を掛けられるようにしましたが、実はこの奥の壁は扉になっていて、奥に収納が隠されています。

2階の富士山が見える部屋は、既存の造り付け本棚はそのまま活かしつつ、在宅ワークや勉強に広々使えるように押入を撤去して繋げワークルームに改修しました。お孫さんが楽しく勉強できるようにアクセントクロスは雲柄をセレクトされました。
アクセントクロス等一部はビニールクロスを採用したものの、壁仕上は基本的に塗壁か紙クロス張・リビングと食堂の腰壁は木板張としています。
天井も一部を除き紙クロス貼としました。床は床暖房の関係もあり合板ベースの無垢材単板張のフローリング、トイレ床は割り切ってCF(クッションフロア)としましたが、洗面所床はコルク貼です。断熱材はサーモウールを採用しました。
他にも寒かった在来浴室はユニットバスに入れ替え、トイレや洗面所も機器を交換して仕上も改修。外壁改修も行いました。結果的に当初想定予算を大幅に上回ってしまいましたが、市の耐震工事補助金と県の省エネ改修補助金も利用することで、ご負担を少しだけ軽減しています。
振り返るとご相談を受けてから足掛け3年の大プロジェクトになってしまいましたが、これからも長くご家族から愛され続ける家として改めて生まれ変わることができたのではないかと思います。
文・写真:岩倉朗子(一級建築士) / アスプル建築設計室
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by jogikai | 2025-03-15 20:19 | リフォーム | Trackback | Comments(0)