古建具(大阪格子)を再生、間仕切り戸に
2025年 12月 15日

リビングからDK方向を見る 全開できる4枚建具を建て込み。板壁は20年前のリフォーム時のまま
築60年の農家住宅の大規模リノベーションにて。
老後の暮らしに向け、劣化改修・断熱・バリアフリー化のほか、使い勝手向上のため一部で間取り変更を行いました。新たに出入り口や収納を作るに当たり、殆どの箇所でこれまで使われてきた建具を修理して生かし、廃棄する建具を最小限にしました。
南北で隣り合いながら壁で隔てられていた応接間とダイニングキッチンは、間の壁を取り払い一つながりのLDKとして使えるようにしました。
来客時や調理中など戸で仕切れるようにしたいとの要望から、壁のあった箇所に4枚の引き戸を建て込みました。
4本溝の鴨居を壁の部分まで伸ばし、開ければ完全にひとつながりになります。

ダイニングキッチンから見る 間仕切り戸を閉めた状態
ここで使用した戸は、長年誰も立ち入らない小屋裏物置に放置されていたものでした。
改修の計画時に小屋裏を検めたところ、傷んではいるものの4枚揃いで残っているのを見つけ、間仕切り戸への再使用を思い付きました。
亡くなったお祖父さんが、昔の増改築の際に使わなくなった建具を捨てずに取っておいたのではないかとのことでした。

小屋裏に人知れず置かれていた建具。障子紙は無く、所々格子が欠損していた
実はこの建具、「大阪格子」と呼ばれる伝統的な美しい建具です。
格子戸と障子を組み合わせたような特殊な建具で、かつて商家の土間と部屋の間仕切りとして盛んに用いられたと、専門書に書かれていました。
土間側に細い格子が配され、反対側にはめ込まれる小障子は、けんどんで取り外しできるつくりです。
冬場は障子をはめて空気の流れを遮断し、夏場はこれを外して通風を図るという、意匠性と機能性を兼ね備えた優れた建具です。
この家の大阪格子の下段部分にはさらに手の込んだ仕掛けがあり、縦板がスライドして風を通す「無双」と呼ばれるつくりになっていました。
また中段の硝子は、砂摺りで山と海の模様が入った凝ったものです。

左)小障子をはめた状態 右)無双を開け、格子だけの状態
折れた格子や破れた小障子は建具屋さんの手により修繕され、袴をはかせて180cmの高さに嵩上げされました。洗いに掛けて汚れを落とし、剥げやキズは塗装屋さんの丁寧な古色塗りでカバーされ、見事な大阪格子がよみがえりました。一枚ずつ建具の寸法をよく検分し、それに合わせた枠を正確にこしらえた大工さんの技量にも支えられました。
お祖父さんが残しておいてくれた建具を、最良のかたちでリノベーションに生かすことのできた、幸運な事例でした。
文:勝見紀子/株式会社アトリエ・ヌック建築事務所
写真:渡辺慎一写真事務所
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by jogikai | 2025-12-15 08:00 | 住宅設計 | Trackback | Comments(0)

