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ガウディとサグラダ・ファミリア展

6月のとある平日に、竹橋の東京国立近代美術館へ「ガウディとサグラダ・ファミリア展―ガウディが後世に託した夢の聖堂、完成への道―」を見に行きました。東京開催は613日~910日(その後に滋賀・名古屋へ)、一部の展示は写真撮影可です。主催は東京国立近代美術館、NHKNHKプロモーション、東京新聞。NHKでも関連の特集番組が放映されましたので、そちらをご覧になった方も多いと思います。
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《サグラダ・ファミリア完成予定図》(展示を筆者撮影)


「数年以内に一緒にスペインへ行こうよ」と約束している友人がいて、「下見として、どう?」とお誘いしたところ「いいね」となり、土日はおそらく大混雑だろうと想像し、休日出勤の振替休暇日に観覧予約したのです。行ってみたら会期始めの平日にもかかわらず、満員盛況。入場規制こそはしていませんでしたが、日本人のガウディ人気の高さを再認識しました

自分はとくにファンというわけではなく、アントニオ・ガウディに関する知識は「路面電車にはねられ亡くなった」ことくらい。サグラダ・ファミリア聖堂の設計責任者として彼は二代目であることを初めて知りました(初代ではなかったのね)。
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《サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型》2001-02年、西武文理大学(展示を筆者撮影)


今回の展示の中で最も興味をひかれたのは、「逆さ吊り実験装置」の模型。紐に砂袋の錘を下げ、あらわれた曲線(懸垂線)によって教会の構造・デザインを構想していたのです。この放物線アーチこそが合理的な構造であると。バルセロナで聖堂実物を見ても、その全体の大きさとファサードの彫刻群に圧倒されて終わってしまうのですけど、次の機会にはもう少し予習して行ったほうがいいですね。

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下部の鏡に、上下が反転して建っているように見える像が映る。

《コローニア・グエル教会堂、逆さ吊り実験》1984-85年西武文理大学

 出典:アイエム[インターネットミュージアム]

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ドローン撮影を含む、517秒の動画が見られます(契約者でなくても)。余計な語りなし。

出典:NHK←ここクリック。


文・写真:松崎志津子 構造設計一級建築士、博士(工学)/

㈱東日本住宅評価センター勤務



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※『女性建築技術者の会(通称:女技会)』とは、
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# by jogikai | 2023-10-01 07:39 | 歴史的建築物 | Trackback | Comments(0)  

経年美化

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写真1.地元の石や土で作られたヨーロッパの町

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写真2.地元の石や土で作られた壁

建築の素材が古くなって変化していくことを「経年変化」と言います。
時間の経過とともに素材が変化していくことを美しいと感じる誰かが、「経年美化」という言葉を生み出しました。

先日、仲間とはじめたポッドキャストで「経年美化」をテーマに話をしました。建築の素材に限らず、古くなっていくものの美しさを感じる時って、どんな時なのだろう?ということを考えました。

例えば、革製品。ヌメ革があめ色に変わってゆき、適切にお手入れをすることでツヤが出ます。例えばデニム。着る人の体のくせが皺になり、その形で色が部分的に抜けて、転写されたようになります。

床材も同じです。住み始めたばかりのころは傷もなく明るい色の木材が、数年経つと徐々に飴色に変化し深みを増しツヤが出ます。傷も味わいのひとつ。本物であることの証左です。ただ古くなっていく、時間とともに変化する、というだけでなく、手をかけて大切にする、その記憶が、経年変化する物を美しく感じさせるのではないかと思います。

数年前、ヨーロッパに古民家を見に行く旅をしました。250年~300年くらいの、本当に古い民家です。ヨーロッパでは古い家ほど価値が高く、DIYで修理したりインテリアを変えたりして、長く住み継いでいます。家の修繕は家事の一種、という意識なので、業者を呼ぶ前になんでも自分で直す文化です。

ヨーロッパの家が美しいのは、そうやって長い時間をかけて、住まい手たちのリレーによって家を愛する記憶が受け継がれているからなのかもしれないなと思いました。


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写真3.フランス、ミディ=ピレネー地域圏のコンクというコミューンにて

文・写真:松山千晶 / 一級建築士事務所ゆくり設計室

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# by jogikai | 2023-09-15 08:01 | 素材・仕上材 | Trackback | Comments(0)  

「日本建築を訪ねる旅」~断崖絶壁に建つ国宝・三徳山三佛寺奥院投入堂~

コロナ禍で外出を控えていた分、沈静化したら日本建築を訪ねる旅を再開することを待ち望んでいました。同時に今まで見た素敵な建築の整理も進めていたので、先ずは三徳山三佛寺(みとくさん さんぶつじ)奥院投入堂(おくのいん なげいれどう)を紹介します。

鳥取県東伯郡三朝町(みささちょう)にある三徳山三佛寺(標高900M)、古くは山全体を境内とする天台宗の山岳寺院であり、修験者の修行の場として存在していました。投入堂はその中腹約470Mの垂直に切り立った断崖の窪みに建っています。そこに至るまでの行者道には「文殊堂」を始めとする懸造りのお堂が点在しています。
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写真1 , 2:「文殊堂」 重要文化財 室町時代後期建立 内部は通常非公開 懸造りで右回り
縁台を廻れるが、手摺もない縁台の幅は60センチほど。恐怖で足がすくむ

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写真3:「観音堂」 県の保護文化財 江戸時代後期、鳥取藩主池田光仲によって再建。
建物に沿って右に回り込むと「胎内くぐり」と呼ばれる暗くて狭い通路があり
左側に出られる。ここでやっと「→投入れ堂」と書かれた小さな案内板が見えた。


とんでもない急傾斜の行者道を登り、辿りついた投入堂は常識では考えられない地形に建っていました。然も軽やかで静謐な優美さに満ちた美しさ。驚きました。細身の角材で構成された懸造りのお堂がまるで自重はないかのように絶壁の窪みに吸い寄せられています。それは美しい蝶々が羽根を休めているようなのです。各柱は岩盤の上に直接立てられ其々、一本の通し柱になっています。床下に伸びる柱と柱の間は水平材の貫(ぬき)ではなく、斜めの筋違(すじかい)で繋いであるなど私には構造的に謎の部分もありました。

平成13年(2001年)奈良文化財研究所が行った年輪年代測定によると投入堂は平安時代後期(10861184年)に建立されたと記録されています

註:鳥取県公式サイト(とりネット)に依る

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  写真4:「投入れ堂」 観音堂を経て行者道を登りきると突然、目の前がひらける。
足場の悪い急斜面の背面に投入れ堂を斜め上側に見上げる。
参拝者は右下の黒い手摺のあたりまでしか近づくことができない。


写真家の土門拳は何度も訪れ、晩年は弟子達に担ぎ上げられて撮影したと伝えられています。それでも『日本第一の建築は?と問われたら三佛寺投入堂をあげるに躊躇しないであろう。』と語ったと云うことです

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写真5:「投入れ堂」北面全景


写真撮影:(有)高橋建築工房 高橋政則 
文:鈴木久子 一級建築士事務所 鈴木久子建築設計室

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# by jogikai | 2023-09-01 08:00 | 歴史的建築物 | Trackback | Comments(0)